「はろはろぉ〜ん」
その発せられた言葉には首をかしげるものがあったがその声は間違いなく懐かしいレイアスの声であった。
喜び扉を開けに行くスナフ・・・
が扉を開けたスナフは硬直したように動かなくなってしまった。
それでも弟との再会を喜ぶレイアスの声は奥で待っている悠久の螺旋と木之元さくらには聞こえていた。
「すなふぅ〜、何してるんだレイアスさんを早く中にお通ししろ。」
反応がないため玄関に行く二人、その二人が眼にしたものとは・・・
「( ̄∇ ̄││)!!! 」
スナフ同様に立ちすくむ二人、その状況に一切かまわず再会を喜ぶレイアス。
「わぁ〜螺旋さん久しぶり〜♪」
骨をカシャカシャときしませ抱きついている、そう骨をカシャカシャときしませ・・・
骨!骨なのだ!全身骨なのだ、世の中で言うスケルトン・・・
そのスケルトンが背中になにやら板のようなものをくくりつけて玄関に立っているのだ。
美しかった姉、尊敬する恩人が立っていると思い行くとスケルトンが立っているのだからそれは立ちすくしてしまうものだろう。
「お邪魔しま〜す」
立ちすくむ三人を気にせず中に入っていくレイアスを慌てて三人も追った。
「レ、レイアスさんずいぶんと痩せましたねぇ・・・」
自分でも何を馬鹿なことを聞いてるんだと思いつつも螺旋はレイアスに話しかけていた。
「そうなのよぉ〜手紙にも書いたとおり今は一人で連邦の看板しょってるから苦労が絶えないのよねぇ。」
そう言い背中にくくりつけてある板をはずし部屋の隅に立てかけるレイアス、その板には地球連邦と書かれている・・・
「ギルドの看板ここに置かせてもらうわねぇ、ふぅ〜肩がこるわぁ〜」
三人「・・・」
(オイ、ここはなにから突っ込めばいいんだ)とコソコソと螺旋
(突っ込む以前になにかがまちがっているのでは・・・)とさくら
(それ以前にあれがレイアス姉さんと認めるのですか?)とスナフ
三人が困惑する中、また〜く気にもとめないレイアスは席についてもいいかしらと料理が並ぶ食卓に着いてしまった。
「歩いてきたので喉が渇いちゃったはお水もらえるかしら。」
差し出された水をゴクゴクと声に出し飲むレイアス、当然水は顎骨を濡らし肋骨を濡らし椅子や床を濡らしてゆく・・・
「ぷはぁ〜生き返るねぇ〜」
三人「・・・」
その後出された料理、酒を残すことなく食べるレイアスもちろん料理は噛み砕かれ即テーブルや床を汚し、酒は辺りを水溜りに変えた。
「ちょっと厠にいってきますね」
そう言って席を立ち厠の場所を聞き出し奥へ消え去ろうとする。
「のぞいちゃあイヤよ」
見えなくなったと思いきや顔だけひょこっと出し言い放ち消えるレイアス。
その言葉に自分の中の何かが切れた音を聞き立ち上がり壁に飾ってある斧をつかみ厠へ向かおうとする螺旋。
「うわぁ〜〜親びんまってまって!姿はあんなんでもあれはレイアス姉さんなんですよ」
そういって必死に螺旋を止めるスナフ。
「ハッ!私はなんてことを・・・」
椅子に腰掛け目を閉じ冷静さを取り戻そうと深呼吸する。
(あれは恩人のレイアスさん恩人のレイアスさん・・・)
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「おまたせぇ〜みてみてぇ〜似・合・うぅ〜♪」
どこで見つけてきたのかレイアスがドレスを着て戻ってきた。
それは螺旋が知人から頼まれさくらにお願いし、ようやくシミが取れたものだった。
今日ここに来るときに持ってきており奥に掛けておいたのをレイアスに不運にも見つかってしまったのだろう。
綺麗に仕上がったドレスは言うまでもなくレイアスの骨についたワインや食事の汚れで無残な姿へと変貌していく・・・
「はっ!!!」
ドレス姿のレイアスにあっけにとられて見ていた螺旋は後ろから聞こえる呪文の詠唱に気がついた。
初級の火球呪文だから詠唱は比較的短い、さくらの目標は迷うことなくレイアス!
火球が手元から離れる寸前に螺旋の体当たりが間に合い軌道がレイアスからそれたものの部屋には甚大な被害が出ている・・・
スナフが懸命に消火している。
「また綺麗に洗えば済むことじゃないか、落ち着け。」
頭に血が上っているさくらを懸命になだめる。
「すみません、おやびんついカッとなってしまい・・・」
と冷静さを取り戻す前にスナフのほうをみてしまったから、さあ大変。
「スナフ手伝うわよ〜」と着ていたドレスを脱ぎそのドレスでバッサバッサと燃えている壁を叩いている。
「ちゅど〜ん」
爆音とともに爆風が襲い掛かり螺旋邸の壁が吹き飛んだ・・・
・
・
・
日も暮れ、螺旋、さくら、スナフが燃え尽きたように椅子に座っている。
部屋も変わり果て見るも無残な状態だ。
変わらないといえば今だ元気に話し続けてるレイアスくらいだ。
「さて日も暮れたし・・・」
ぴくっと3人が反応する。
「寝ますか♪」
「れ、れっ、レイアスさんうちにはそ、そのぉ・・・」
動揺する螺旋に察してかレイアスが言葉を遮る。
「大丈夫♪大丈夫♪場所くわないから〜♪」
そういうとスナフを手招きでそばに呼ぶとパカっと頭部をはぐると脳のある部分に黄金に輝くりんごが存在していた。
「これとってね〜んで朝になったら又はめてね〜。」
スナフがその黄金のりんごを開いた頭部から取り外すと頭蓋骨を残し体は砂のように床に崩れ落ちた。
「おやびん、これは知恵の実ですよ、一口食べただけで壮大な知恵がつくという。」
「ん〜どれどれ。」
がぶり・・・むしゃむしゃ・・・
「!!!」
「だめですよ〜おやびん、ちゃんと拭いてから食べないと・・・」
そういって螺旋からりんごを取り上げるとまだかじられてない表面をきゅっきゅと拭くとさくらもがぶりと実を食べた。
おろおろしているスナフに安心しなよと知恵の実を渡した。
「まだ食べるところは十分にあるよ。」
「いやいやいや、そんなことじゃなくてですね・・・がぶり、むしゃむしゃ・・・」
「姉はどうするんですか!」
螺旋がぐいっと裏庭を指差す!
「埋めといて、ついでにその実にあった種も植えといてみよう。」
恩人である姉をそんな簡単に埋めといてだなんて・・・おやびんあんたって人は!
握り締めた拳を振り上げた、その時!
「ほうきとちりとりはそこね。」
ギラッっと鋭く睨まれ・・・
「ラジャ〜」振り上げた拳は螺旋に対する敬礼に変わってしまった。
そして実の弟にあっさりはき取られ裏庭に埋められてしまったレイアスであった。
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そして時は遥かに流れて・・・
食べられ埋められた知恵の実の種が発芽し巨木になっていた。
闇夜にその木に実ったひとつの実が輝くと何かに引っ張られるように木から落ち、ずっずっずと地面に飲み込まれていった。
その翌朝。
「はろはろはろぉ〜ん、おっはよぉ〜」
地面から掛け声とともにレイアスが飛び出してきた。
「あら、やだ今夜はずいぶんと寝相が悪かったのね、うふふ。」
ふんふんふ〜んと何かを口ずさみながら身繕いを済ますと・・・
「地球連邦隊員募集〜」と叫び骨をカシャカシャときしませながら走っていくレイアスであった。
おしまい。